投資の世界では、企業価値とはその会社の将来の収益性であると私は考えます。投資をするのであれば、将来の収益性が維持向上していくと考えられる、価値の高い銘柄を選ぶことが重要です。
会社とは本来、人びとの幸せに貢献するためにあります。資本主義経済の下、世の中を良くしていくための、より優れた製品やサービスを、企業間の健全な競争によって、より低価格で提供することで、人びとの生活を豊かにすることにあります。長期のスパンでその会社の収益性を考えるにあたっては、世の中に必要とされる会社であるかどうか。社会の発展に貢献できる会社であるかどうかが重要な要素となります。市場経済の原理では、投資の利潤は世の中が求める方向へと産み出されていくからです。
米国のピューリッツァー賞を3度受賞したジャーナリスト、トーマス・フリードマン氏は、著書「グリーン革命」(日本経済新聞社)の中で、「石器時代が終わったのは、石がなくなったからなのではない。最初は青銅、つぎは鉄といった具合に、代わりになるツールを人間が発見したから、石器時代はその幕を閉じた」と指摘しています。私たちは現在、技術の進歩と将来への投資によって、化石燃料に代わる次世代のクリーン・エネルギーを、安価で手にしようとしています。今は、こうしたグリーン・テクノロジーを大量生産するよう要求する市場の圧力が、社会変革をリードする企業の価値を押し上げています。
しかし、いかに魅力的な銘柄であっても、それを通常の価格で買っていたのでは、投資家として充分なリターンを得ることはできません。その企業の将来について悲観が募り、投資家心理が冷え込み、価格が価値を大幅に下回るタイミングでお金を投じていきます。やがて、悲観が過ぎ去り、相場が上向き、今度は過熱する手前で株式を手放して、投じたお金を手元に戻します。私はこれをリターンと呼びます。
マーケットは常に大海のうねりのようであり、上昇と下降を繰り返します。晴れた日もあれば嵐の日もやってきます。船乗りは海や天候を制御することはできませんが、自分の感情と行動をコントロールできることを知ります。海の危険と風や潮や波の特性を学び、経験を積みながら、合理的な航海術を身につけます。
危険にあふれる株式市場では、価格が価値を大幅に下回る状態を忍耐強く待ち続けることが必要です。たとえ価格に対する基準が厳しすぎたために、投資機会を逃すことになったとしても、価値と価格に対するこの規律を冷徹なまでに貫くことが、危険から身を守り充分な収穫を得る唯一の方法です。
私は価値ある株式を安く買い、そして高く売ります。
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速水 禎(はやみ ただし)
朝日ライフ アセットマネジメント株式会社 資産運用部 リサーチチーム SRI運用チーフファンドマネジャー。1988年早稲田大学法学部卒。野村證券株式会社・野村投資顧問株式会社(現 野村アセットマネジメント株式会社)を経て、2000年に朝日ライフ アセットマネジメント株式会社入社。2000年より「朝日ライフ SRI 社会貢献ファンド(愛称:あすのはね)」の運用を担当。著書に「SRI社会的責任投資入門」(日本経済新聞社、共著)。SRIに関する講演・執筆など多数。
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