そもそも資産運用の歴史は古く、今から約4千年前の古バビロニア、古アッシリア時代にその原型が存在していたと伝えられています。(『振り子の金融史観 金融史と資産運用』 平山賢一著、シグマベイスキャピタル社) 当時古バビロニアの商人たちは、地域によって金と銀の交換比率が異なることに着目しました。そして、金に対して銀が過大評価されている地域では、商品の購入代金は銀で支払い、販売代金は金で受け取り、一方で銀に対して金が過大評価されている地域では、購入代金は金で支払い、販売代金は銀で受け取ることで、資産を増やしていったと言われています。
現在私たちが行っている株式投資による資産運用も、基本的な仕組みはこれと同じです。つまり、その企業本来の価値に比べて市場で大幅に過小評価されている株式を購入し、代金を現金で支払う。やがて株式が本来の価値もしくはそれ以上に評価されるのを待って株式を手放し現金に交換する。これをだいたい3年から5年のスパンで繰り返しながら資産を増やしていくのが、株式投資による資産運用です。
問題は、価値をどう見極めるかです。つまり、資産運用の成否は、投資対象となる資産の価値をどう見抜くかにかかっていると言っても過言ではありません。古バビロニアの商人の場合、金銀の交換比率が地域によって違うという情報が価値でした。では、株式投資の場合、企業の価値とはいったい何でしょうか。
私たちがよく耳にするこの言葉の概念を、明確に定義できる人は意外と少ないと思います。人によっては、それは時価総額であったり、収益力であったり、また最近は企業の社会的責任などもこの中に含める方もいるようです。株式投資を行うには、まず企業価値を明確に定義することからはじめます。
資産運用の世界では、企業の価値とは、「将来の収益性」であると、私は定義しています。株式投資をするのであれば、「将来の収益性」が維持向上していく価値の高い銘柄を選ぶことが重要です。そして「将来の収益性」とは、「事業の魅力度」と「相対優位性」の2つの要素でほぼ決定されると考えています。
「事業の魅力度」では、例えば鉄鋼産業、自動車産業、医薬品産業などについて、温暖化防止、人口動態、雇用問題、途上国の貧困解消など、社会的課題を考慮しながら、長期スパンで産業構造や事業特性をとらえて、その魅力度を結論づけます。「相対優位性」では、同じ業界内での工場や製品のエネルギー効率、環境技術、品質、人材活用、価格競争力などを考慮して、その企業の将来の優位性を結論づけます。
「事業の魅力度」が高まるほど、また「相対優位性」が高まるほど、「将来の収益性」が向上し、企業価値も拡大していきます。株式投資とは本来このように、株価ではなく企業価値を買うものと私は考えます。
以上
速水 禎(はやみ ただし)
朝日ライフ アセットマネジメント株式会社 資産運用部 リサーチチーム SRI運用チーフファンドマネジャー。1988年早稲田大学法学部卒。野村證券株式会社・野村投資顧問株式会社(現 野村アセットマネジメント株式会社)を経て、2000年に朝日ライフ アセットマネジメント株式会社入社。2000年より「朝日ライフ SRI 社会貢献ファンド(愛称:あすのはね)」の運用を担当。著書に「SRI社会的責任投資入門」(日本経済新聞社、共著)。SRIに関する講演・執筆など多数。
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