今は株式を買うタイミングではないと、投資をためらっている人がいるとすれば、その一番の理由は、経済の先行きが不透明で不安を感じていることではないでしょうか。現在の株式相場が低迷しているのは、将来に対する楽観や期待がしぼんでいることを反映したものです。しかし、そうした人たちのぐずぐずとした心配をよそに、世界経済は今後、短期的な景気変動の波を繰り返しながら、確実に拡大して行くと、私は見ています。
現在地球上には69億人もの人々が暮らしており、これから2050年にかけてさらに20億人以上増加することが、国連の人口予測で示されています。それだけの人々が地球上に増えれば、生活に必要な食料、エネルギー、物資、サービスなどの需要はどんどん拡大し、人々がさらに上のクラスの豊かな生活を求めていくことで、もっと大きな需要を生み出していきます。
また、人口増加と同時進行で、高齢化問題や地球環境に関わる社会的な課題が次々と現れ、それらを解決するために新たな産業が誕生していくでしょう。こうして世界のビジネスは間違いなく拡大していきます。株式投資による資産運用は、本来このような中長期的な視野に立ち、世界経済の大きな潮流にゆったり乗ることで、収益を獲得することを目指すものです。
株式を買わないもうひとつの理由として、株価はまだこの先も下がるのではないか、だったら何も今買う必要がないのではという懸念もあります。古今東西、資産運用の成功は、資産の「価値」と「価格」をきっぱり分別して考えることが出発点になっています。そして株式投資であれば、株価が企業価値を下回るタイミングで投資し、保有し、今度は株価が企業価値を上回るタイミングで売却し、投資資金を回収します。
投資で成功する人たちは過去の経験から、ときに大勢とは反対側に立って行動することが、大切な財産をリスクから守り、確実に増やしていくための効率的な方法だという結論に至って行動します。つまり、大勢がまだ株は下がりそうだと株式を売却しているときに、人知れずしっかりと買っているものなのです。
また、世界でも他に類を見ないスピードで進む日本の人口減少と高齢化や、日本の国家財政が抱える債務の重圧などによる日本悲観論を、日本企業への投資をしない理由にしている人も多いと思います。しかし、投資の世界では、国家と企業は別のものです。
国が頼りなければ、ビジネスでどんどん国境を越えて行き、社会的責任を果たしながら進出先地域の発展や成長に貢献する会社や、この厳しい景気と競争環境でビシビシと鍛えられ経営体質をより一層強化した会社に目を向けていくべきでしょう。むしろ、そうした日本に本社を置く、優れたグローバル企業の株式が、日本の証券取引所に上場しているがために、割安に放置されているとすれば、それは格好の投資機会になっているはずです。
「経済の先行きが不透明」、「株はまだ下がりそう」、「日本はダメ」といった、今、株式を買わない理由は、将来に備えてさっさと行動に移す主体的な投資家にとっては、そっくりそのまま株式を買う理由に転換してしまうものなのです。
以上
速水 禎(はやみ ただし)
朝日ライフ アセットマネジメント株式会社 資産運用部 リサーチチーム SRI運用チーフファンドマネジャー。1988年早稲田大学法学部卒。野村證券株式会社・野村投資顧問株式会社(現 野村アセットマネジメント株式会社)を経て、2000年に朝日ライフ アセットマネジメント株式会社入社。2000年より「朝日ライフ SRI 社会貢献ファンド(愛称:あすのはね)」の運用を担当。著書に「SRI社会的責任投資入門」(日本経済新聞社、共著)。SRIに関する講演・執筆など多数。
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