シリーズ『日本株投資の魅力』では、SRIの視点から魅力的な日本企業をスポットでとり上げ、そのビジネスの魅力度と業界での競争力について注目していきたいと思います。今回は引き続き漢方薬メーカーのツムラをとり上げ、同社の競争優位性に着目していきたいと思います。
奈良時代に日本に伝わった漢方医学は、日本の伝統医療として長く主流の地位を占めていました。しかし幕末から明治にかけて、日本の医学が急激に西洋医学へ切り換わっていく中で、漢方医学はその効果を示す科学的証拠が欠けていたこともあり、日本の医学体系の中で脇役の存在に甘んじることになりました。そうした中、ツムラは1893年(明治26年)に津村順天堂として創業し、日本の伝統医療である漢方医学および漢方薬の復権に力を入れてきました。以後日本の漢方薬の歴史は、ツムラの歴史と重なっていきます。
ツムラは漢方薬業界のリーダーとして、漢方薬の効果やメカニズムを科学的に究明していくと同時に、漢方医学普及啓発のため医師向けに各種の専門的なセミナーを開催するなど、情報発信を積極的に行うことで漢方医学の発展に貢献してきました。1976年にツムラの医療用漢方薬が健康保険の対象に適用されると、漢方医学および漢方薬は徐々に医療分野でも受け入れられていきました。同社は大学医学部や医科大学における漢方医学教育の充実に向けても、積極的な情報提供活動を行い、現在では全国80の大学医学部・医科大学のすべてで漢方医学の講義が導入されるようになりました。
このようなツムラによる漢方医学の確立と普及に向けた積極的な活動により、現在は医療用医薬品として148品目の漢方薬が保険適用の対象になっており、そのうち129品目が同社の漢方薬です。また2010年度に1202億円にまで成長した日本の医療用漢方薬市場のうち、ツムラは84%の市場シェアを有しています。
ツムラの事業方針は明確です。同社は漢方医学と西洋医学を対立関係におくのではなく、むしろそれぞれの強みを活かし、両者の融合によって世界で類のない最高の医療の提供に貢献することを基本としています。そして近年医療ニーズが高く、西洋医学の新薬治療でも難渋している疾患の中で、漢方薬が特異的に効果を発揮する疾患に的を絞り、効果やメカニズムについて科学的証拠を確立することに注力しています。例えば、現在がん治療においては、様々な新薬開発が進んでいますが、抗がん剤の副作用には非常に強いものがあり、がんに対する効果が高くても治療を中止せざるを得ないような場合があります。こうした患者に対して漢方薬を処方することで、副作用の症状が軽減される場合が多くあることが報告されています。
また、ツムラは原料生薬の約80%を中国から輸入しています。漢方薬事業の最大のリスクのひとつに原料生薬の調達があると考えられますが、ツムラは中国の生産農家の近代化や生産性向上を支援し、長年にわたって信頼関係を築きながら、生薬産地の生物多様性の保全のため、野生生薬の栽培化や保護育成にも取り組むことで生薬の持続的な調達を図っています。最近ではラオスで現地法人を設立し自社農場での生薬の栽培を始め、北海道夕張市でも自社農場を運営することで、現地での雇用創出や社会経済基盤の整備を進めると同時に、生薬調達リスクの分散を図っています。
今や漢方薬業界で揺るぎない地位を築いたツムラ。漢方薬ビジネスを通じて社会的な課題に積極的に取り組むための様々な活動が、同社の競争優位性を支えていると考えられます。
以上
速水 禎(はやみ ただし)
朝日ライフ アセットマネジメント株式会社 資産運用部 リサーチチーム SRI運用チーフファンドマネジャー。1988年早稲田大学法学部卒。野村證券株式会社・野村投資顧問株式会社(現 野村アセットマネジメント株式会社)を経て、2000年に朝日ライフ アセットマネジメント株式会社入社。2000年より「朝日ライフ SRI 社会貢献ファンド(愛称:あすのはね)」の運用を担当。著書に「SRI社会的責任投資入門」(日本経済新聞社、共著)。SRIに関する講演・執筆など多数。
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|---|---|
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換金(解約)時 および償還時 |
所得税および地方税 | 譲渡所得として課税 換金(解約)時および償還時の差益(譲渡益)に対して10% |
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